
《翠鳥園遺跡出土品3D化プロジェクト》
大阪府羽曳野市の近鉄南大阪線古市(ふるいち)駅。
ここから徒歩15分ほどの住宅地の真ん中に、遺跡公園として整備された「 翠鳥園(すいちょうえん)遺跡 」があります。関西の方々でもあまりご存知ないかもしれませんが、実はここは、旧石器時代のいわば「石器アトリエ跡」がそのまま見つかったという極めて希少な遺跡なんです。出土資料には、割れた石片を再び接合できる「接合資料」が多数含まれ、石器製作の工程を追う手がかりを豊かに提供してくれます。
本遺跡のもう一つの魅力は、石器素材の由来にあります。出土した石器の素材には、奈良・大阪県境にある二上山(にじょうさん)付近で産出するサヌカイト が使われており、遺跡から約5kmの距離を運搬して利用されていたことが分かっています。このサヌカイトは、ガラス質で鋭く割れる特性を持ち、ナイフ形など先鋭な石器を製作する材料として重宝されたと考えられています。
同遺跡は、30箇所以上の石器製作跡が確認され、2万点を超える破片や完成石器が出土。中には、破片どうしを接合して原石形に戻すことができる資料も含まれ、旧石器時代の技術を可視化できる場所として注目されています。現在は「翠鳥園遺跡公園」として整備され、モニュメント、案内板、展示模型などを通じ、来訪者にも石器づくりの痕跡や過去の風景を体感できる場となっています。
本プロジェクトでは、羽曳野市と同志社大学の包括的な学術協定の枠組みの下、弊社が実行部隊として出土品の3D化を担いました。高解像度スキャンとメッシュ処理、テクスチャ付与、破片の仮接合モデル生成などを行い、学術研究・教育・展示・デジタル展開に応用可能な立体データ提供に寄与すればと考えております。